スケルトンホースは懐かない

【SCP紹介】SCP-138-JP『田んぼにはいるな!』

__なぜ当たり前のルールが守れないのか。

 

元記事は以下のリンクから閲覧してください。

SCP-138-JP - SCP財団

 

 

現代の子どもは田んぼで遊んだりしないんだろうなと郷愁の寂しさを感じつつ、今回の記事を紹介していきます。

 

概要

日本らしさが滲む田んぼのSCP。

とある県の、とある市にある、とある村の道路に、突如として現れる田んぼ

この時点で既に怪奇現象だが、いくつかの規則性も確認されており、

その規則性が

・現地時間の17:00から翌朝の5:00に

・道路4か所のうちどこかの1か所に出現

・大きさは10m×10mの正方形

・中央に案山子が一体設置されており

・作物は植えられていない

というもの。

 

これだけだと、奇妙な田んぼにすぎない。

この記事の醍醐味はこの田んぼの特異性にある。

引用しながら解説していくよ。

 

SCP-138-JPの特異性は、SCP-138-JP内に侵入した場合に発現します。一歩でもSCP-138-JPに侵入した人間(以下「侵入者」)は、耳元で日本語による男性の怒鳴り声を聞きます。これは日本語を理解できない人間でもその意図を完全に理解できるようです(インタビュー記録-138-JP参照)。この声は録音機器等に記録されることはなく、侵入者のみが聞き取ります。その声を聞き、すぐに退去した場合は特に危険性はありません。

 

田んぼに入ると特異性が発動。

田んぼに入った侵入者だけに、日本語による男性の怒鳴り声が聞こえ、侵入者はそこに何らかの意図を感じ取る。

ちなみに、声を聞いてからすぐに田んぼから撤退した場合、問題は起こらないようだ。

 この特異性にはまだ続きがある。

 

しかし怒鳴り声の後も退去しなかった場合、侵入者はまるで底なし沼に足を踏み入れたかのようにゆっくりとSCP-138-JPに飲まれ始めます。埋没までの時間は身長により左右されますが、一般的な成人男性ではおよそ█分ほどかかります。GPS、各種記録機器などは埋没した時点で破壊されます。次回の出現時に前回の侵入者数分の案山子が出現し、SCP-138-JPの消滅時に置き去りにされます。これらの案山子の外観は一般的なものです。しかし、構造物は侵入者の服、骨、筋肉、[削除済]等が使われていることが判明しています。また解剖により、SCP-138-JPの消滅時まで案山子が「生きていた」可能性が極めて高いことが示唆されています。

 

この引用に記された特異性こそが、このSCPの真髄であり、

私が今回この記事を紹介した動機に外ならない。

底なし沼と化した田んぼに飲み込まれていくだけでも十分不気味だけど、

次回の田んぼの出現時に前回の侵入者数分の案山子が出現に震える。

侵入者は案山子になったのだ。

田んぼが消えると案山子はその場に置き去りにされる。

案山子は田んぼが消える直前までは生きていた、ようだ。

 

次はインタビュー記録。

インタビュー対象:エージェントG█████

SCP-138-JPの最初の報告者で、日本語が流暢ではない。)

 インタビュアー:████ ██博士

 

████ ██博士:すまないが早速君が見たことを話してくれないか、我々はまだ何も情報を得ていない状況なんだ。

エージェントG█████:ああ、分かってるよ。まず俺はあの地方で聞かれた「怪談」について調査を行ってたんだ。夜になると急に道路が田んぼに変わっちまうってな。元々あの地方は閑散としてたからな、そういう噂も立つんじゃねーかと半信半疑だった。そもそもインターネットの情報だったしな。

 

中略

 

エージェントG█████:ああ、もう膝まで埋まってたよ。ひたすら叫んでた。「助けてー!!」ってな・・・
████ ██博士:そして君は救助しようとしてSCP-138-JPに侵入を試みた。
エージェントG█████:そうさ、今思えば軽率だったことは確かだ。一応命綱を付けていたが、相手の事を何も知らずに飛び込んだからな。
████ ██博士:そして君は声を聞き・・・

 

このインタビュー記録はぜひ全文を記事と併せて読んでほしいので、引用はここまでにする。

エージェントが最後に嗚咽した理由、それはエージェントがインタビューに応じている事実の残酷さだ。

つまり、エージェントは案山子を助けられなかったのだ。

 

この発見の記録から田んぼの危険性を認識した財団は、数々の実験を行いこの田んぼの異常性と収容方法を確立しようとする。

記事はインタビューに続き、実験記録に移るよ。

 

実験記録138-JP-1 - 19██/██/██

田んぼの調査にラジコンヘリを用いた結果、失敗。

 

実験記録138-JP-2 - 19██/██/██

対象:Dクラス 1名
目的:沈み始めた後の脱出方法の模索。
結果:沈むことを考え、元陸上選手の*1Dクラスを用意し実施した。被験者は沈み始めた後に方向転換し外に向かおうとしたが、「田んぼがどこまでも広がってやがる!!」と叫び、足踏みを始め外に出ることはなかった。また埋没する前に案山子の方を振り返り「こっちに来るな!!」と叫んだ。頭部に装着させたカメラの映像や周囲の職員による視認には異常はなく、水田の大きさも変わらず、案山子も動いてはいなかった。

「Dクラス職員の雇用と利用、管理の方法について」 - SCP財団

 

実験記録138-JP-3 - 19██/██/██

対象:Dクラス 4名
目的:侵入者が沈み始めた後、水田の外から安全に救助する。
結果:Dクラス1名を侵入させ、ロープにより救助するようDクラス3名に指示した。侵入したDクラスは実験記録138-JP-2と同じ幻覚を見たが、投げ込まれたロープは認識した。何とか侵入したDクラスがロープに捕まることに成功。引っ張り上げようとしたが、足しか埋まっていない状態にも関わらず引き上げは難航。ロープを持っていたDクラスより協力が要請され、責任者である████ ██博士を含む職員6名が協力し合計9名で引っ張ったところ、[削除済]。

 

救助に向かった9名はどうなったのか?

この実験を受け、財団の意見は最終的にこうなった。

 

補遺:SCP-138-JPに対する全ての実験を禁止とする。少なくとも我々のうちの誰かが首を縦に振る理由がない限りは永遠に、だ。 — O5-██

 

実験打ち切り。

じゃあ、この田んぼによる被害はどうやって防げばいいのか。

財団は、田んぼの出現地付近を封鎖し、夜間工事が行われている…ということにしている。

封鎖後に侵入者があった場合は拘束、尋問し、クラスB記憶処置を施したうえで解放しているようだ。

そして、

 誰かがSCP-138-JPに侵入した場合

救出行為は厳禁なのである。 

 

雑感

日本支部からの紹介記事になりました。

ブログの編集も慣れてきたかな、と思います。

さて、今回紹介したこのSCPはジャパニーズホラーの要素が強い記事になっています。

田んぼや案山子を題材にした不気味な設定と味わいに惹かれ、この記事の紹介に到りました。

以上です。

お目通しありがとうございました。

 

良い週末を。

 

 

*1:Dクラス職員については、下記のURLを参照に

【書籍紹介】誰も知らない世界のことわざ

 

本記事は以下の書籍の紹介兼読書感想文です。

盛大なネタバレを含みますので、記事閲覧の際はご注意願います。

誰も知らない世界のことわざ

誰も知らない世界のことわざ

 

 

その中で、個人的に気にいったことわざをご紹介。

 

 

フォームは

「ことわざ」:言語

雑感:

 

といった感じで。はい。

では、スタート。

 

ことわざ

 


 

「ザワークラフトの中で自転車をこぐ。」:フランス語

雑感:まず、ザワークラフトって何ぞ

ザワークラフトというのは酢漬けキャベツのことで、その中で自転車をこぐことから、もう一歩も先へ進めず、その見込みもないことを表している。

ジャガイモの袋に入って、日々ジャガイモを食べて過ごし、日々ジャガイモの壁を開拓し、最期は絶望しながらジャガイモで窒息死だったか圧死だったかをした物語を思い出したよ。

このことわざにはちゃんとした由来があるが、ここでは割愛。次。

 


 

「カラスが飛び立ち、梨が落ちる。」:韓国語

雑感:いかにも関係がありそうな事柄の間に、必ずしも因果関係があるわけではないことを表している。確かに、私たちは意味のない情報から意味のパターンを見出そうとしてしまうことがあるように思う。

カラスが飛んだから梨が落ちたのか、梨が落ちたからカラスが飛んだのか。

二者の間に関係はないのである。ハッとさせられたことわざ。 

 


 

「ロバにスポンジケーキポルトガル語

雑感:これは意味が予想しやすいことわざだと思う。

そう、日本のことわざでいうところの「馬の耳に念仏」「猫に小判」「豚に真珠」

価値を理解しない、あるいはそれを得る必要がないものにそれを与えることの無意味さを表している。

ロバやスポンジケーキの喩えから、その土地柄や文化的背景が垣間見える。

日本以外でも同じような言葉が歩いているのは面白いね。

 


 

「あなたは、私のオレンジの片割れ。」スペイン語

雑感:もうね、ただただ詩的な言い回しに脱帽したよ。

「オレンジの片割れ」は誰かにとっての魂のパートナー、生涯愛する人の喩え。

情熱の国といわれるスペインらしいことわざだと思う。 

1つのオレンジは実った時から1つだなんて野暮なことを考えてはいけない。

 


ラディッシュを下から見る。」:ドイツ語

雑感:ラディッシュは二十日大根のこと。赤くて小さいやつね。

埋まっているラディッシュをしたから見るということはつまり死を意味する。

日常的な喩えでも意味は壮大。「死」を謳った表現は数多くある。そのうちの1つ。

確かに、埋葬されたら植物の根っこしか見えない。

でも、日本の場合は灰になるから、風に乗って世界中の花が見られるよ。

火葬万歳!

 


 

「テーブルクロスには小さすぎ、ナプキンには大きすぎる。」オランダ語

雑感:中途半端な様子をうまく喩えていることわざ。

日常のあらゆる場面で使えると思う。例えば、

「1時間の休暇では間に合わないけど、2時間の休暇では時間を持て余す。」

これは先日の私である。

 


 

「ブタの背中に乗っている。」アイルランド語

雑感:第一に、ブタって人間が乗れるのかなっておもt

実際ブタに乗るのではなく、幸せで、人生に成功している意味だそう。

農業の歴史の中で、人間はブタと生活を共にしてきた。その関係が順風満帆に続いているのは、なるほど確かに無上の幸福かもしれない。

豪華客船に乗っている幸福感とはまた違う、深い幸福感があるね。

 


 

「真夏の太陽にさらされたバケツいっぱいのエビのように。」:オーストラリア英語

雑感:暑苦しく窮屈で耐え難い様子を喩えたものかと思ったんだ。

実際は、ある人がその場を急いで立ち去ろうとする際に使う表現。

「ねえ、ここは暑すぎるよ。腐っちゃうから失礼するね。」といった具合。

喩えのインパクトが秀逸。

 


 

「目から遠ざかれば、心からも。」ヘブライ語

雑感:Out of sight , Out of mind.

つまり、遠距離恋愛破局する理由。

私は「会えない時間が愛を育てる」のことわざの方を信じるよ。

 


 

「目が私についていった。」:マルタ語

雑感:眠ってしまった様子を表している。

眠れないときは大体脳が一人で騒いでいるので、脳も道連れにしていただきたい。

 


 

「ある日はハチミツ、ある日はタマネギ。」アラビア語

雑感:数ある言語の中でもミミズが踊っているようにしか見えないアラビア語

日本語に訳してみると、こんな可愛らしいことわざが。

日本でいうところの「禍福は糾える縄の如し」「人間万事塞翁が馬である。これは故事成語だけど。

楽しい日があれば、そうでない日もある。大切なことは、その時々に全てを悟らないこと!

 


 

「水を持ってきてくれる人は、そのいれものをこわす人でもある。」:ガー語

雑感:ガーナの政府公認語。

このことわざが意味するのは、「助言することがないときや、手伝うつもりがないときは、何かを成し遂げようと努力して、その最中にうっかりミスをしてしまった人を批判すべきではない」ということ。

聞かせたい人がいる人も多いかもしれない。

もっと優しくなってもいいんだよ、社会。

 


 

「ガレージにいるタコのような気分。」スペイン語

雑感:場違いなところにいて困惑しているさまを喩えた表現。

8本の足を持つタコも、ガレージの中では狼狽えることしかできない。

場違いに感じた時「いやー、ガレージにいるタコの気分ですよ。」なんて言ったら余計に居場所がなくなりそうではある。

 


 

「青の問いに、緑の答えを与える。」チベット語

雑感:見当違いの回答をすること。

SNSやネット上で日々行われている論争なんかで多く見かける「論点のズレ」

他に、政治家の発言や謝罪会見でも散見されるね。

回答なのか意見なのか?私も日常的に気を付けないと。

 


 

「私の別荘は、ずっと外れにある。」ウクライナ

雑感:今起きていることを私は知らないし、関係もないという意味。

物事の外に自分を置いていることが伝わってくる表現。

そうすることによっても、誰かに迷惑をかけず幸せでいられるなら理想的だね。

 


 

「ブドウはお互いを見ながら熟す。」トルコ語

雑感:次第に仲間同士で似るようになり、まわりの人から学び成長していく様子を喩えている。

「あなたは、最も一緒に過ごす時間の長い5人を平均したような存在だ」

確かに、長い時間一緒にいる人と部分的に似ることはあると思う…けど、5人の平均が自分になる考えると途端にあやふやになる自己像。

 


 

「一輪の花だけが春を作るのではない。」:アルーマニア語

 雑感:たとえ重要そうに見えても、ひとつの現象だけでは全体を判断できないこと。

さっきの「ある日はハチミツ、ある日はタマネギ。」の意味を鋭くした表現だと思う。

一輪の花が咲いたからといって春が来たと喜ぶことも、一枚の葉が散って冬が来たと悲しむことも、同様に糠喜びであり杞憂であるかもしれない。一喜一憂することなかれ!

自分に言い聞かせたいよ。

 


 

 感想

今回紹介した「誰も知らない世界のことわざ」からの引用と雑感でした。

本には他にも魅力的なことわざがたくさん紹介されているので、気になった方は上記のAmazonからどうぞ。

絵本のような絵とユーモアのある言葉たちが、世界の文化や地域的な特性を楽しく教えてくれます。

世界って広い…などと月並みな感想を抱く反面で、表現こそ違えど人間はどこにいても同じことを戒めるのだとも感じました。難しくも面白い。

ページを捲るたびに、自分の表現や語彙の乏しさと頭の固さを嘆きつつ異文化交流を楽しみました。

以上!

 

【SCP紹介】SCP-3295『ご喫煙ありがとうございます』

 

__仕事の合間に、うまい空気を吸いたいだけなんだ。

理解しないのはアンタらの方だ。

 

 

概要

喫煙所のSCP。

さて、健康的な見地から、我々の現実世界のみならず、財団においても屋内の喫煙禁止がO5評議会の多数決で可決されることとなった。

その時、異世界喫煙ソリューションズと社名を名乗る謎の人型実体がどこからともなく出現。

 

 

 

異世界喫煙ソリューションズ「屋内喫煙が禁止されると聞いて、代替案を提示したいんだ。そういう訳だから検討よろしく!あ、これ名刺ね! 」

 

財団(O5)「いや謎過ぎるし、潜在的なリスクもあるかもしれない。却下で! 」

 

 

O5-6「.................。 」

 

 

 

このO5評議会の構成員であるO5-6がやらかす

O5-6はヘビースモーカーで、先の多数決に反対票を投じていた。

どうやったのかは不明だが、O5-6は名刺を入手し異世界喫煙ソリューションズと勝手に契約を結んでしまったのだ。

 

その後、財団のあらゆるサイトにSCP-3295なる喫煙所が出現。

突如出現したこの喫煙所。誰がどうやっていつ建てたのか尋ねても、誰も答えることは出来ず、口を揃えて 「 自分は何も知らないけど、まあ誰かが作ったのだろう 」と言う。

しかも、この喫煙所を破壊する試みは絶対に成功しない、していない。

 

喫煙所の屋根部分はワームホールになっており、喫煙所内で発生した煙などは全てワームホールに吸い込まれる。

ワームホールの先は不明。恐らく異世界

 

 

 

雑感

謎。

異世界喫煙ソリューションズの正体、出自や目的の一切が謎に包まれたまま完結している。

肝心の喫煙所についても、発生した煙が吸い込まれてどこへ行くのか、何の為か、謎のまま。

その完成された謎と風刺的な展開が印象に残る良記事だと思い選定しました。

今回の『ご喫煙ありがとうございます』は、前回の『ナナホシホシテントウ』とは全く異なった色の記事になっています。

『ご喫煙ありがとうございます』はストーリー性が単調であり、謎を含めても理解しやすいため、引用等はせず、概要を自分の言葉で表した短めの紹介記事にしてみました。

SCPに親しみのない人にとっても、世界観の伝わる記事となっていれば幸いです。

今回、SCP独自の用語としては、O5評議会(おーふぁいぶひょうぎかい)とサイトが登場します。

O5評議会とは、端的に言えば財団の最高意思決定機関のことです。O5-1から13名で構成されており、彼等は識別子で呼称されています。

サイトとは、これも端的に言えば部署のことです。

 

以上です。お目通しありがとうございました。

それでは、良い週末を。

 


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-3295 - ご喫煙ありがとうございます
http://ja.scp-wiki.net/scp-251-jp

Author:ObserverSeptember
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【SCP紹介】SCP-755-JP 『ナナホシホシテントウ』

  

『確保。収容。ナナホシ。』

 

元記事

http://ja.scp-wiki.net/scp-755-jp

 

 

概要

SCP-755-JPはナナホシテントウに酷似した昆虫。

翅が水色をしている以外は、一見普通のナナホシテントウ...なんだけど。

この水色のナナホシテントウ、その異常性は厄介な『認識災害』にある。

 

どうやら、認識災害は未知の方法でヒトに感染するらしい。

感染したヒト個体はSCP-755-JP-1と呼ばれる。

 

SCP-755-JPは休暇中の財団エージェントが発見したことを切欠に収容に到った。

発見者であるエージェントは、報告時点で既にSCP-755-JPに認識を汚染されており、めでたく(?) SCP-755-JP-1-1に指定されることとなった。

 

で、このテントウムシに認識を汚染されるとどうなるか?

それは以下に引用する通り。

 

SCP-755-JP-1はすべての「平行して覚えている3つ以上の事柄の内の1つ」をナナホシというワードに置換します。例えばSCP-755-JP-1に光の三原色を訪ねると「ナナホシ・青・緑」や「赤・ナナホシ・緑」などと答えるようになります。

 

この認識災害は、一度感染するとSCP-755-JP-1のすべての表現と知覚に影響し、記憶処理も通用しない。

そして、誰かから異常を指摘されると混乱に陥ることも。そりゃそうだ。

 

そして、感染者が増えてからがこのオブジェクトの真髄...というか、阿鼻叫喚というか。

 

先程の「 光の三原則」

1人の感染者(SCP-755-JP-1-n)

「 赤、青、緑」→「 赤、ナナホシ、緑 」

もう1人の感染者(SCP-755-JP-1-n+1)

「 赤、青、緑」→「 赤、青、ナナホシ

 

となったら、彼等の会話はどうなるのか?

つまり、ナナホシに置き換わるワードに相違が生じた場合。

 

その答えが、こう。

 

2人のSCP-755-JP-1の間で同じワードがナナホシに置換されている場合、会話に支障は現れません。しかし異なったワードがナナホシに置換されている場合は会話に無視出来ない程度の支障が現れます。例えば東西南北の4方向の内、東がナナホシに置換されているSCP-755-JP-1同士は正常な会話が可能です。ですが西がナナホシに置換されたSCP-755-JP-1と南がナナホシに置換されたSCP-755-JP-1の間で行われた会話は方角や世界史の話題において支障を来します。

 

感染者の全員が、同じワードをナナホシに置き換えられるなら、辞書が書き変わるだけで被害は拡大しなかった。

置き換えられるワードは感染者によって異なる場合がある。

この場合、感染者が増え続けると、最早真っ当な意思疎通は不可能になるだろう。

皆が皆、『ナナホシ』に異なった定義を与えてしまう。

世界中で大混乱が起こる日も近い。

 

ここで概要を整理すると、

 

■SCP-755-JP

水色の翅を持つナナホシテントウ

未知の方法により、平行して覚えている3つ以上の事柄の内の1つをナナホシというワードに置換してしまう異常性を有している。

 

■SCP-755-JP-1

認識を汚染された人間。

感染者によって、同じ並列の概念中でも置き換えられるワードに相違が生じる場合がある。

 

■SCP-755-JP-1-1

SCP-755-JPを休暇中に発見した財団エージェント。報告時点で既に認識を汚染されており、第1感染者として指摘されてしまった。

 

話を先に進める。

このSCP-755-JPの報告書は更新されており、更新前の報告書を読むことができる。

 

アイテム番号: SCP-755-JP
オブジェクトクラス: ナナホシ
特別収容プロトコル: SCP-755-JPは低危険度生物収容室に収容してください。SCP-755-JPの異常性への曝露条件が解明されるまで、給餌はナナホシクラス職員に行わせてください。

 

オ ブ ジ ェ ク ト ク ラ ス : ナ ナ ホ シ 。

ナ ナ ホ シ ク ラ ス 職 員 。

 

もう少し読み進めてみる。

 

  SCP-755-JP-1は「平行して覚えている3つ以上の事柄の内の1つ」をナナホシというワードに置換します。例えば光の三原色は「赤・青・ナナホシ」ですが、これをSCP-755-JP-1に尋ねると「緑・青・ナナホシ」や「赤・緑・ナナホシ」などと返答します。

 

少し省略。

 

例えば東西ナナホシ北の4方向の内、東が南に置換されているSCP-755-JP-1同士は正常な会話が可能です。ですが西が南に置換されたSCP-755-JP-1とナナホシが南に置換されたSCP-755-JP-1の間で行われた会話は方角や世界史の話題において支障を来します。

 

あーもうめちゃくちゃだよ。

どうやら、この報告書を書いた財団職員もばっちり感染しちゃってる模様。

 

更に、この報告書には感染者にインタビューを行った記録がある。

インタビューの対象は勿論のこと、インタビュアーである博士も感染しているので、訳の分からない会話が展開されている。

 

その一部を抜粋しよう。

 

██博士: それではインタビューを始める。まず質問だが光の三原色は知っているか?

D-3759: ……それぐらいなら分かる。赤、緑、ナナホシだろ?

██博士: 私の記憶では赤、青、ナナホシだがね……まぁ良いとしようか。次にこの絵に使われている色を答えてくれるか?(██博士が赤、青、ナナホシの三色が使われた絵を取り出す)

D-3759: ……あぁ、赤と緑とナナホシが使われてるな。

██博士: じゃあこれは?(██博士は虹の絵をD-3759に見せる)

D-3759: あぁーえっと虹だから、赤、橙、黄、緑、青、紫、ナナホシだっけ?

 

そして、インタビュー終了後に博士はこんな報告書を書いている。

 

終了報告書: D-3759に三原色について尋ねた時は青を緑だと主張したが、虹の絵を見せると橙を紫と言い、藍色と言うべきタイミングで紫と言った。何について話しているかによって、ナナホシに置き換えられる単語は変更されるらしい。更なる調査が必要だ。 -██博士

 

光の三原色についての認識

D-3759 ナナホシ

博士      ナナホシ

ナナホシを共通項として捉えると考えやすい。

D-3759はナナホシと発言した。

D-3759にとって、ナナホシである。

しかし、博士はナナホシに置き換えられているため、D-3759が言ったナナホシは博士にとってになるのだ。

虹の例では、D-3759は藍色がナナホシに、博士は紫がナナホシに置き換わっている...うん、ややこしい、とても。

(ちなみに、橙と紫の関係については、作者が意図的に不明にしている)

 

ナナホシゲシュタルト崩壊

これは、この報告書を書いた財団職員の追記となっている。

 

追記: 20██/ナナホシ/█

 

お手上げ。

 

私の知人はすべて話が通じなくなってしまったし、私が普段関わらない職員の中に正常な人間が残って居るかすら怪しい。部屋番号102だとか方角は南だとか言われても分からないし、Euclidなんていうふざけたオブジェクトクラスが作り上げられている。

 

部屋番号102、南、Euclidがそれぞれナナホシに置き換えられてしまったようだ。

もう何が何だかだよ!

他にもナナホシに置き換えられているが、頭が痛くなるので割愛。

 

このままだと感染が広がり続け、世界の文明が崩壊するかと思...いきや、SCP-755-JPが給餌を2週間行われていないことを理由に餓死してしまった。

そして、SCP-755-JPの死をトリガーに感染者たちの認識災害が解消されたのだ。

平穏はこうしてあっさり戻ってきた。

以来、SCP-755-JPは発見されておらず、SCP-755-JPのオブジェクトクラスはNeutralized(無効化されたオブジェクトクラスのこと)に再分類されるに到ったのである。

 

雑感

2019年を飾る最初の記事になりました。

日本支部ならではの巧みな言葉遊び、水色の翅を持つナナホシテントウ、様々な要素が魅力的だったことが選定理由です。

編集に2時間費やしましたが、編集は時間を忘れる程楽しく、記事の印象も深いものになりました。

自己満足ではありますが、今後も暇と気力次第で紹介記事を書こうと思います。

お目通しありがとうございました。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-755-JP - ナナホシホシテントウ
by me_te_de_ko
http://ja.scp-wiki.net/scp-755-jp

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